中国語の过は「〜したことがある」と訳せますが、過去に起きた動作なら何にでも付けられるわけではありません。話し手は、ある一回の出来事を報告するのではなく、基準となる時点より前に、その種類の経験が少なくとも一度あったことを現在の知識・会話へ取り出しています。
过は出来事を経験として保存する
基本語順は「主語+動詞+过+目的語」です。过は軽声で guo と読み、動詞に続けて発音します。経験が今の会話に関係するため、「行ったことがあるから道を知っている」「食べたことがないから試したい」のような文脈でよく使われます。
Wǒ qùguo Běijīng.
私は北京へ行ったことがあります。
她学过法语。
Tā xuéguo Fǎyǔ.
彼女はフランス語を学んだことがあります。
你吃过北京烤鸭吗?
Nǐ chīguo Běijīng kǎoyā ma?
北京ダックを食べたことがありますか。
我以前看过这部电影,所以还记得故事。
Wǒ yǐqián kànguo zhè bù diànyǐng, suǒyǐ hái jìde gùshi.
以前この映画を見たことがあるので、まだ物語を覚えています。
最後の文では、映画を見た具体的な日時より、見た経験が現在の記憶につながっていることが重要です。これが过の典型的な視点です。
过と了は「経験」と「出来事報告」の焦点が違う
同じ場所へ行った事実でも、会話の目的によって过と了を使い分けます。过は経験の有無、了は区切りある出来事の実現を前面に出します。
| 文 | 会話の焦点 |
|---|---|
| 我去过西安。 Wǒ qùguo Xī’ān. 私は西安へ行ったことがあります。 | これまでに西安を訪れた経験がある |
| 我去年去了西安。 Wǒ qùnián qùle Xī’ān. 私は去年、西安へ行きました。 | 去年起きた特定の旅行を報告する |
| 我去年去过西安两次。 Wǒ qùnián qùguo Xī’ān liǎng cì. 私は去年、西安へ2回行ったことがあります。 | 去年という期間内で、訪問経験が2回あった |
三つ目のように、过と去年を一緒に使うことは可能です。「过は具体的な時間語と絶対に共存しない」と覚えると、自然な文まで誤りにしてしまいます。ただし、「昨日の10時に到着した」と一回の時点・経過を物語るなら、通常は了を選びます。
Wǒ zuótiān shí diǎn dàole jiǔdiàn.
私は昨日10時にホテルへ着きました。
我以前到过这家酒店。
Wǒ yǐqián dàoguo zhè jiā jiǔdiàn.
私は以前このホテルへ来たことがあります。
前者は昨日の移動の一場面、後者はホテルを訪れた経験です。同じ到でも、何を答える文なのかが違います。
否定は没(有)+動詞+过
「これまで一度も経験がない」は、没または没有を動詞の前に置き、过を残します。不は通常、経験の有無を否定する形には使いません。没去过は「行った経験がない」、没去は「ある機会に行かなかった」という違いがあります。
Wǒ méi qùguo Zhōngguó.
私は中国へ行ったことがありません。
她没有吃过辣的四川菜。
Tā méiyǒu chīguo là de Sìchuān cài.
彼女は辛い四川料理を食べたことがありません。
我昨天没去中国餐厅。
Wǒ zuótiān méi qù Zhōngguó cāntīng.
私は昨日、中華料理店へ行きませんでした。
一つ目と二つ目は経験がゼロ、三つ目は昨日の予定・出来事が実現しなかっただけです。三つ目の人が以前その店へ行った経験を持つ可能性はあります。
疑問文は経験の有無を尋ねる
Nǐ qùguo Chéngdū ma?
成都へ行ったことがありますか。
去过。/没去过。
Qùguo. / Méi qùguo.
あります。/ありません。
你看过这本书没有?
Nǐ kànguo zhè běn shū méiyǒu?
この本を読んだことがありますか。
看过一次。
Kànguo yí cì.
一度読んだことがあります。
吗疑問文と、文末に没有を置く形のどちらも使えます。答えでは動詞+过を繰り返すと、経験の有無が明確です。短く有/没有だけで答えるより、去过/没去过のように中心動詞を残すと学習者には分かりやすくなります。
回数・反復は过の後ろで示す
経験が何回あるかを言うときは、三次、两遍などの動量表現を加えます。次はよく使われる語順です。
Wǒ qùguo Běijīng sān cì.
私は北京へ3回行ったことがあります。
这本书我看过两遍。
Zhè běn shū wǒ kànguo liǎng biàn.
この本を私は2回通して読んだことがあります。
他参加过一次中文演讲比赛。
Tā cānjiāguo yí cì Zhōngwén yǎnjiǎng bǐsài.
彼は中国語スピーチコンテストに一度参加したことがあります。
次は回数、遍は最初から最後まで一通り行った回数に向きます。目的語が長い場合は、参加过一次+活動名のように回数を目的語の前に置く形も自然です。単語を一列で暗記せず、動詞と目的語の長さにも注意します。
小时候・以前・曾经で経験の枠を作る
过は人生全体だけでなく、過去のある段階を枠にして経験を述べられます。小时候は子どものころ、大学的时候は大学時代、曾经は「かつて」と経験の存在を強調します。
Wǒ xiǎoshíhou zài Shànghǎi zhùguo.
私は子どものころ上海に住んだことがあります。
她大学的时候学过一年中文。
Tā dàxué de shíhou xuéguo yì nián Zhōngwén.
彼女は大学時代に中国語を1年間学んだことがあります。
我曾经做过翻译工作。
Wǒ céngjīng zuòguo fānyì gōngzuò.
私はかつて翻訳の仕事をしたことがあります。
这些文は、過去の期間を示していても、そこで得た経験を現在から振り返っています。曾经と过はよく共に使われますが、每回必須ではありません。
「今より前」ではなく基準時より前になる場合
初級では「これまでの経験」と覚えれば十分ですが、过は必ず現在より前だけを表すとは限りません。未来の基準時より前に一つの経験を済ませる形にも現れます。
Děng nǐ kànguo zhè běn shū, wǒmen zài tǎolùn.
あなたがこの本を読んでから、私たちは話し合いましょう。
この文では、読む経験は発話時点より後でも構いません。話し合う時点から見て、それより前に読んでいることが条件です。これは、过を単なる「過去形」としないための重要な例です。
よくある誤文を直す
- 誤:我不去过北京。
Wǒ bù qùguo Běijīng.
私は北京へ行ったことがありません。
正:我没去过北京。
Wǒ méi qùguo Běijīng.
私は北京へ行ったことがありません。
経験が一度も成立していないことは、没+動詞+过で表します。 - 誤:我昨天十点到过酒店。
Wǒ zuótiān shí diǎn dàoguo jiǔdiàn.
私は昨日10時にホテルへ着いたことがあります。
正:我昨天十点到了酒店。
Wǒ zuótiān shí diǎn dàole jiǔdiàn.
私は昨日10時にホテルへ着きました。
一回の到着時刻を報告する文なので、経験の过ではなく出来事の了が自然です。 - 誤:你吃过了北京烤鸭吗?
Nǐ chīguo le Běijīng kǎoyā ma?
北京ダックを食べたことがありますか。
正:你吃过北京烤鸭吗?
Nǐ chīguo Běijīng kǎoyā ma?
北京ダックを食べたことがありますか。
一般的な経験の有無を尋ねるだけなら、过と了を重ねません。 - 誤:我去三次过上海。
Wǒ qù sān cì guo Shànghǎi.
私は上海へ3回行ったことがあります。
正:我去过上海三次。
Wǒ qùguo Shànghǎi sān cì.
私は上海へ3回行ったことがあります。
过は動詞の直後に置き、回数は目的語の後ろに置けます。
練習問題(12問・14点)
1〜10は各1点、11と12は各2点です。経験、特定の出来事、未経験、回数のどれを表すかも答えてください。
- 「私は中国へ行ったことがあります」を中国語にする。
- 「私は四川料理を食べたことがありません」を中国語にする。
- 「あなたはこの映画を見たことがありますか」を中国語にする。
- 空欄に了または过を入れる:我去年去___西安。
Wǒ qùnián qù ___ Xī’ān.
私は去年、西安へ行きました。 - 空欄に了または过を入れる:我以前去___西安。
Wǒ yǐqián qù ___ Xī’ān.
私は以前、西安へ行ったことがあります。 - 正しい否定を選ぶ:A 我不看过。 B 我没看过。
A Wǒ bù kànguo. B Wǒ méi kànguo.
A 私は見たことがありません。B 私は見たことがありません。 - 誤りを直す:她没去过了北京。
Tā méi qùguo le Běijīng.
彼女は北京へ行ったことがありません。 - 「私は北京へ2回行ったことがあります」を中国語にする。
- 「私は子どものころ中国語を学んだことがあります」を中国語にする。
- 次の違いを説明する:我昨天没去那家店。/我没去过那家店。
Wǒ zuótiān méi qù nà jiā diàn. / Wǒ méi qùguo nà jiā diàn.
私は昨日その店へ行きませんでした。/私はその店へ行ったことがありません。 - 経験を尋ねる質問と肯定の答えを一往復作る。过を両方に使う。
- 去年という時間枠と回数を入れ、过で経験を述べる文を一つ作る。
解答と理由
- 我去过中国。
Wǒ qùguo Zhōngguó.
私は中国へ行ったことがあります。
理由:これまでの訪問経験を述べるため、動詞去の後ろに过を置きます。 - 我没吃过四川菜。
Wǒ méi chīguo Sìchuān cài.
私は四川料理を食べたことがありません。
理由:経験がゼロなので没+吃+过です。 - 你看过这部电影吗?
Nǐ kànguo zhè bù diànyǐng ma?
あなたはこの映画を見たことがありますか。
理由:看过で見る経験、吗でその有無を尋ねます。 - 我去年去了西安。
Wǒ qùnián qùle Xī’ān.
私は去年、西安へ行きました。
理由:去年の一回の旅行を出来事として報告する読みなので了が適切です。 - 我以前去过西安。
Wǒ yǐqián qùguo Xī’ān.
私は以前、西安へ行ったことがあります。
理由:以前の訪問を経験として現在から振り返るため过です。 - B 我没看过。
Wǒ méi kànguo.
私は見たことがありません。
理由:経験の不成立は不ではなく没で否定します。 - 她没去过北京。
Tā méi qùguo Běijīng.
彼女は北京へ行ったことがありません。
理由:未経験は没+動詞+过で完結するため、了を重ねません。 - 我去过北京两次。
Wǒ qùguo Běijīng liǎng cì.
私は北京へ2回行ったことがあります。
理由:去过で経験を示し、两次で経験回数を数えます。 - 我小时候学过中文。
Wǒ xiǎoshíhou xuéguo Zhōngwén.
私は子どものころ中国語を学んだことがあります。
理由:小时候が経験の時間枠、学过がその枠内の経験です。 - 我昨天没去那家店。
Wǒ zuótiān méi qù nà jiā diàn.
私は昨日その店へ行きませんでした。
我没去过那家店。
Wǒ méi qùguo nà jiā diàn.
私はその店へ行ったことがありません。
理由:前者は昨日の一回が不成立、後者は基準時まで訪問経験がゼロです。 - A:你去过广州吗?
Nǐ qùguo Guǎngzhōu ma?
広州へ行ったことがありますか。
B:去过,我去过两次。
Qùguo, wǒ qùguo liǎng cì.
あります。2回行ったことがあります。
理由:質問と答えが同じ訪問経験を扱い、双方に过があれば満点です。 - 例:我去年去过上海三次。
Wǒ qùnián qùguo Shànghǎi sān cì.
私は去年、上海へ3回行ったことがあります。
理由:去年という期間内で複数回の経験があったことを焦点にしていれば満点です。
まとめ
- 動詞+过は、基準時より前の出来事を経験として述べる。
- 了は特定の出来事報告、过は経験の有無へ焦点を置きやすい。
- 未経験は没(有)+動詞+过で表す。
- 过は去年・小时候などの時間枠とも共存できる。
- 次・遍などを使って経験回数を示せる。
- 未来の基準時より前に経験を済ませる条件文にも过が現れる。
过を選ぶ前に、「いつ起きたかを報告したいのか」「経験があるかを伝えたいのか」を決めてください。経験の有無、回数、過去の期間、現在との関係を一つずつ加えると、了との違いを訳ではなく会話の目的から判断できます。
中国語を順番に学びたい方へ
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